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[株式会社アイ・ティ・アール]アナリスト・コラム(第4回):ワクチン開発に貢献するクラウド・コンピューティング
第2回のコラムでは、クラウド・コンピューティングを用いて大幅なコスト削減を実現した事例をご紹介しました。今回は、クラウド・コンピューティングを活用することによって、ビジネス価値を創造した事例をご紹介いたします。
ワクチンや医薬品の開発や試験において、試料の輸送や保管に対して非常に厳格な温度管理が要求されます。ライフサイエンス試料コンテナの製造メーカーであり、そのコンテナの輸送サービス事業者でもあるCryoPort社(米国)は、10日以上マイナス150℃以下に温度をキープして、世界中にコンテナを輸送するサービス「CryoPort Express Shipper」を行っています。また、その輸送サービスに対するWebベースの注文システムである「CryoPortal」を提供しています。CryoPortalは、24時間 x 365日の注文受付システムであると同時に、コンテナ輸送状況のトラッキングと冷却システムのモニタリング(温度など)のシステムです。

このモニタリング・アプリケーションは、ライフサイエンス業界向けワイアレス・センサー・ネットワーク・システムの開発を行っているKLATU Networks社(米国)の協力のもとに、パブリック・クラウド・サービスの一形態であるIaaS(Infrastructure-as-a-Service)上で構築・運用されています。IaaSを選択した理由は、下記の通りです。
・輸送時の温度変化をすべて記録する必要があり、膨大なデータ量を処理・保管する必要がある(サービス開始時で、年に4千万件以上の輸送が見込まれた)
・インド・中国・南アフリカを含む全世界でサービスが利用可能である
・急激な需要増減に迅速かつ柔軟に対応可能である
・上記条件を満たした上で、コストがリーズナブルであること
IaaSとして、Amazon Web Services(AWS)のEC2(Elastic Compute Cloud)が選択され、効率的な運用管理のためにRightScale社のCloud Management Platformを採用しました。KLATU社が開発したアプリケーションは、標準的なLAMP(Linux, Apache, MySQL, Python)で書かれており、EC2にはAMI(Amazon Machine Images)形式で配布されました。迅速なスケール・アップ、スケール・ダウンのために、EC2の負荷分散オプション(Elastic Load Balancing)を用いています。
前述の条件を満たすシステムを従来の手法で構築することは技術的には可能ですが、その場合、構築・運用・保守に必要なトータル・コストは非常に高くなると思われます。今回の事例のような、HPC(High Performance Computing)分野のシステムは、これまでは非常に高性能なコンピュータを大量に導入する必要がありましたが、クラウド・コンピューティングの登場によって、十分低価格で構築することができるようになり、新しいワクチンや医薬品を低コストを提供できる可能性を高めたと言えるでしょう。
次回コラムでは、クラウド・コンピューティングの利用動向データをご紹介する予定です。
[株式会社アイ・ティ・アール]アナリスト・コラム(第1回):クラウドの定義は重要か?
[株式会社アイ・ティ・アール]アナリスト・コラム(第2回):オバマ政権を裏で支えるクラウドとは?―50%以上のコスト削減を実現した超巨大システム
[株式会社アイ・ティ・アール]アナリスト・コラム(第3回):国内におけるクラウド・コンピューティングの認知度と利用状況
[株式会社アイ・ティ・アール]アナリスト・コラム(第5回):国内におけるクラウド・コンピューティング利用動向 へ続く