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ニューインデックス株式会社 津田武 2010年08月05日 14時53分 更新


[株式会社アイ・ティ・アール]アナリスト・コラム(第7回):クラウド・コンピューティングの形態によって異なるクラウドのメリット/デメリット

私は、国内ユーザー企業の方々とクラウド・コンピューティングについてディスカッションをさせていただくことがよくあります。その際に良く尋ねられる質問の1つが、クラウド・コンピューティングのメリットとデメリットは?ということです。しかし、これは意外とお答えするのが難しい質問なのです。

といいますのも、ひとくちにクラウド・コンピューティングと言っても、いろいろな形態があり、クラウド・コンピューティング全体を包括して特徴を述べることは意外と難しいからです。ここでは、まずクラウド・コンピューティングの形態について、整理してみます。

クラウド・コンピューティングの形態

クラウド・コンピューティングの形態としては、アプリケーションのサービス提供であるSaaS(Software-as-a-Service)、開発プラットフォームのサービス提供であるPaaS(Platform-as-a-Service)、ITインフラのサービス提供であるIaaS(Infrastructure-as-a-Service)、というサービス提供モデルに基づく区分が最も有名です。
これとは別に、クラウドサービスのデプロイメント・モデルによる区分があります(図1)。クラウド・サービス事業者(Cloud Service Provider:以降CSPと略します)がインターネットを経由してサービス提供を行うパブリック・クラウド、企業の情報システム部門または情報システム子会社が自社およびグループ企業に対し自社WANを経由してサービス提供を行うプライベート・クラウドが有名です。もともとクラウドとは、パブリック・クラウドのことを指しており、CSPが膨大な数量のサーバを所有し、グローバル規模でサービス提供を行う事による規模の経済効果で、従来とは次元の異なるコストでサービス提供を行うビジネスモデルをさしていました。しかし、パブリック・クラウドはインターネット経由の利用が基本であるため、インターネットからの脅威が常に存在すること、企業システムとの連携手法はSOAPやRESTなどのサービス連携に限られること、など、企業が積極的に活用するには躊躇する材料も存在します。プライベート・クラウドは、自社所有モデルであるため、規模の経済効果は限定的となるが、大量データのバッチ転送などの従来のシステム連携手法も利用可能であり、インターネットの脅威も存在しない。この2つの形態の中間的存在が、セキュア・クラウド(バーチャル・プライベート・クラウドとも言います)です。パブリック・クラウド・サービスをVPN回線やインターネットVPN(IPsecなど)を通じて企業WANに接続する形態で、パブリック・クラウドの規模の経済効果を享受しながら、インターネット脅威を最小に押さえ、企業システムとの柔軟な連携が可能です。

<図1 クラウド形態>
図1 クラウド形態
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出典:アイ・ティ・アール

各クラウド・コンピューティング形態のメリット/デメリット


各種クラウド・コンピューティング形態の特徴比較を図2に示しました。プライベート・クラウドにも、SaaS/PaaS/IaaSの形態があり得るのですが、現時点ではプライベートPaaSを実現するのは困難であるため、表にはプライベートSaaSとプライベートIaaSを示しています。そして従来のオンプレミス(自社設置)型の個別サーバを加えています。ここに示しましたように、クラウド・コンピューティング形態が違うと特徴も異なりますので、クラウド・コンピューティングのメリット/デメリットを述べる際には、どの形態のことを論じているのか明確にする必要があります。
最後に、クラウド・コンピューティングのコストについて触れます。クラウド・コンピューティングにはこのように多くの形態があり、クラウド・サービス・プロバイダも数多く存在します。このような環境においてコストモデルが少数であるはずがありません。ですので、案件ごとに精査しない限り厳密なコスト比較はできないと考えて下さい。多くのメディアは「クラウド・コンピューティングによってコスト削減可能」という論調を展開しますが、そのような十把一絡の情報はあまり信頼すべきでありません。コスト削減どころか、コスト増になるケースもありうることを、国内ユーザー企業の方々はしっかり認識すべきです。
事実、ITRで支援した国内企業の新システムの選定において、SaaSがトータルコストにおいてオンプレミス型システム(手作りやパッケージ)より高額となるケースも散見されているのです。多くの国内SaaSプロバイダの価格体系は、国内企業が新システムの検討時に比較項目とする5年間といったトータルコストにおいて、パッケージや手作り開発に劣る場合が少なくない点に留意していただきたいと思います。

<図2 各種クラウド・コンピューティング形態の比較>
図2 各種クラウド・コンピューティング形態の比較
※クリックして拡大
出典:アイ・ティ・アール

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プロフィール

著者画像

甲元宏明
株式会社アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト

前職では情報部門でSCM・CRMなどのシステム開発、MPLS・VoIPなどのWAN構築、IT戦略立案を主導。その後、欧州企業との合弁企業においてグローバルITを統括し、IT戦略立案・ERP展開を実施した。2007年より現職。担当は、ITアーキテク チャー・開発方法論・クラウドコンピューティング・ネットワーク・CRMほか。